象印 ZOJIRUSHI

肥満の原因はごはんにあらず!
糖質オフダイエットの落とし穴

まずは糖質オフダイエットがどのようなものなのか教えてください。
糖質オフダイエットとは、以前にアメリカの医師が提唱した「低炭水化物ダイエット」を原型として広まりました。肥満の原因が炭水化物(糖質)の摂りすぎである点に注目し、炭水化物の摂取量を制限するというダイエット方法ですね。
食事量は減らさず、炭水化物だけを減らせば体重が減る簡単な
ダイエットということで、日本でも話題になりましたね。
ただ、欧米食と和食という食の違いがすっぽり抜け落ちたまま国内で広がってしまいました。欧米型の食事の炭水化物といえば、ハンバーガー・ホットドッグ・パスタ・ドーナツ・パンケーキ、甘い飲料など高脂質なものが多く、ごはんを中心とした日本の食事とだいぶ違いますよね?
確かに…。
バターや砂糖といった肥満の原因になりそうな成分が
多く含まれていますね……。
このような食文化で肥満が増えてしまうのは理解できますし、「せめて炭水化物を減らそうよ」という発想になるのはわかります。ではここで、「ごはん」のことを考えてみてください。確かに炭水化物ではありますが、ごはんは水だけで炊いて、そのままでもおいしく食べられる食べ物です。白いごはんには、余分な脂質や糖質は含まれていません。
つまり、日本の糖質オフダイエットは理にかなっていない
ということなのでしょうか?
私はそう考えています。また、農林水産省の食料自給率に関する統計資料を見ると、1960(昭和35)年から2021(令和3)年にかけて、ごはんの消費量が半分以下に減っているのに対し、肥満の割合が増えています。本当にごはんが肥満の原因なら、肥満の割合も減らないとおかしいですよね?このデータを見ると、肥満の原因はごはんではなく、肉や油を多く摂る「高脂質食」へ変化してきたことが大きく関与しています。
1人当りの米の消費量の推移(肥満の割合)
そうですね…。
まさか、世間で信じられていることと真逆の結果になっていたとは。
そうなんです(笑)ごはんと肥満には、直接的な関係がないことを理解いただけたかと思います。また、炭水化物(糖質)は人間の身体に欠かせない栄養素のひとつです。十分な知識がない状態で糖質オフダイエットを行うと、健康被害につながる可能性もあるのです。

糖質オフダイエットの落とし穴!
ブドウ糖不足による悪影響とは?

五ツ星お米マイスター 金子さん
ダイエットにはごはんを抜くのがいい!といったイメージがあったのですが、
少し頭を切り替える必要がありそうです。ちなみに、健康被害につながる
可能性があるという部分をもう少し解説してもらえますか?
まず、理解してもらいたいのは、炭水化物の働きです。炭水化物(糖質)は、消化吸収される過程でブドウ糖に変換されます。このブドウ糖は、脳を働かせるエネルギー源にもなっています。不足するとだるいと感じたり、集中力の低下、イライラしたりします。だからこそ、脳にブトウ糖が不可欠なのです。糖質は生命活動に欠かせない脳や筋肉のエネルギー源として消費されます。
なるほど。
この炭水化物の働きと健康被害はどのように関係するのでしょうか?
人間の体はよくできていて、糖質が不足しないように非常用に備蓄をしています。その状態を続けていくと身体が省エネモードのような状態になってしまい、身体全体の動きや判断が鈍くなってしまうのです。炭水化物(エネルギー)の摂取量が減ると代謝が悪くなり、体温が下がるので低体温や冷え症、臓器の機能や免疫力の低下、スタミナ不足で疲れやすくもなります。
もしかすると「グリコーゲンに蓄えられた糖質が分解されれば、健康への悪影響はあったとしてもダイエット効果があるのでは?」と感じる方もいるかもしれません。ただ、ダイエット効果としても、むしろ逆効果になってしまう恐れがあります。
それは、ダイエット効果も得られないということなのでしょうか?
ダイエット効果がまったくないとは言えません。グリコーゲンに蓄えられた糖質が分解されると、糖質の3~4倍にあたる水分も同時に脱水するため、一時的に体重は減りますが、再び糖質を摂取すると4倍近い水分子と結合するので、すぐに体重は元に戻ってしまいます。脂肪を減らすことはできないため、ごはんを抜いてのダイエット効果はあまり得られないのです。また、身体が省エネモードに入ることで、基礎代謝が低下するというのも大きな問題です。
基礎代謝が低下することで身体にどのような影響があるのですか?
基礎代謝は、「体温維持・呼吸など、生きていくために最低限必要なエネルギー」のことです。基礎代謝が高いと、普通の生活はもちろん、寝ている間にもエネルギーがしっかり消費され、体重が増えにくくなります。しかし、糖質不足で身体が省エネモードになると、基礎代謝が低下し燃焼が鈍化してしまうのです。つまり、痩せにくく太りやすい身体になるということです。
なるほど…。
ダイエットのはずが、まさか逆効果になる恐れがあるとは…。
「ごはんを抜くだけ」と聞くと、簡単そうですし、やってみたくなる気持ちもわかるのですが、糖質不足による身体への悪影響はぜひ知っておいてほしいです。また、炭水化物を摂ることによる血糖値の上昇を気にされる方もいると思うのですが、ごはんに含まれるデンプン(多糖類)は、ブトウ糖(単糖類)、砂糖(少糖類)に比べて、ゆっくり消化吸収されていきます。そのため血糖値の上昇も穏やかなのです。
食欲も満たされ、腹持ちもよく、食べ過ぎを防ぐのにも効果的なので、世間のイメージとは逆に、私はダイエット食に適していると考えています。

ダイエットには「糖質オフ」ではなく
カロリーバランスの内訳が重要?

五ツ星お米マイスター 金子さん
基礎代謝を維持するためにも「ごはんを食べるべき」
というのはわかったのですが、食べ過ぎるとやはりよくないですよね…。
どのような食事法が良いのでしょうか?
私は、カロリーの量ではなく、「内訳」を変えることが重要だと考えています。カロリーバランスとは、「炭水化物・脂質・たんぱく質」の3大栄養素の摂取量の割合のことです。先ほどご紹介したように、現代は炭水化物の摂取量が減少し、脂質が増加している状態なので、これを正常に戻すのが重要だと考えています。
具体的にどのようなカロリーバランスが理想的なのでしょう?
スイスの研究グループによる実験では、過剰に脂肪を摂取した場合、過剰な分が脂肪組織に蓄積され、消費(代謝)が下がってしまう。一方で、過剰に炭水化物を摂取した場合は、余った糖質はほとんどが筋肉と肝臓のグリコーゲンに合成され、残りは熱として代謝されました。高脂質食が高糖質食より圧倒的に肥満を引き起こすことを裏付け、「ごはん」のような高糖質食の方が太りにくいことを示しているのです。
ただ、ごはんをたくさん食べて、おかずも今までの量ではカロリーオーバーになるので、ごはんを増やした分おかずを減らさなければなりません。
やはり摂りすぎている脂質を減らし炭水化物を増やし、バランスの良い食事をこころがけるのが良いと思います。理想的なのは全体の半分以上が炭水化物(ごはん)で構成されているカロリーバランスで、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準2020年版」によると、炭水化物60%、脂質25%、たんぱく質15%くらいの割合が理想的です。イメージとしては、おかず控えめのシンプルな「定食スタイル」ですね。
カロリーバランスの推移
具体的に1日にごはん○○杯など、
炭水化物摂取量のわかりやすい指標はありますか?
「日本人の食事摂取基準」によると、成人に必要なカロリーは「男性:2,650 kcal、女性:2,000 kcal」とされています。女性の2,000 kcalの60%で計算すると、1日1,200 kcal(2,000kcal×0.6)が目安になります。ごはん茶碗1杯が約240 kcalなので、女性の場合は1日5杯(2合)程度。男性の場合は、7杯(3合)程度なので、「1日2合」が目安です!
なるほど!
ただ、そう言われるとかなりの量に感じますね…。
炭水化物を減らしている方にとってはとても多いかもしれませんが、「米の消費量の推移グラフ」を見てわかるように、実は昭和40年代に食べていた量なのです!
今は、おかずも美味しいし、多様な食事の中で炭水化物だけを多く摂ることは難しいかもしれませんが、効果的に炭水化物を摂るために「おにぎり」もおすすめです。
例えば、おかず・おやつの量を控えて脂質の量を減らして、その分ごはんを多めに食べてほしいですね。
ちなみに、炭水化物としてはやはり、ごはんが一番ということになるのでしょうか?
そうですね。他の炭水化物(主食)を摂るとどうしても脂質が増えてしまいます。ごはんは調味料を入れずに水だけで炊いて、そのままでも美味しく食べられます。エネルギーとして燃焼されやすく、腹持ちが良く、食べ過ぎを抑える効果もあります。ダイエットという観点で考えると、ごはんは太りにくい食事といえると思いますよ。

メリハリをつけて無理なく継続!
ごはん食を続けるためのコツは?

金子さん、本日はありがとうございました。糖質オフダイエットの落とし穴や
ごはんがダイエットに適していることがよく理解できました。
とはいえ、ごはんを食べ続けるのも飽きてしまう可能性がありますよね?
最後に、継続するコツがあれば教えてください
「平日はごはんを中心とした日本型の食生活」を目指し、「休日は、思いっきり好きなものを食べる」など、日常とメリハリをつけるのが良いと思います。定期的にご褒美の日を設けて、無理なく継続できるように工夫してみてください。たまに、雑穀などを取り入れて楽しむのも良いでしょう。雑穀には食物繊維などの他の栄養素も豊富に含まれ、噛む回数も増えるので、脳の活性化や便秘の解消にも繋がると思います。
糖質オフダイエットなどの影響でネガティブなイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、ごはんは身体にさまざまなメリットをもたらしてくれる素晴らしい食材なのです。ダイエットや健康維持のためにも、ぜひ今回ご紹介したごはんの食べ方を実践してみてください。

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